先日、卵巣腫瘍(成熟嚢胞性奇形腫)の腹腔鏡手術を受けました。
普段は看護師として手術患者さんをケアする側ですが、自分がいざ手術を受けるとなるといろんな疑問・不安・心配事がでてきました。
・手術の予約はどれくらい待つ?その間に腫瘍は大きくならない?
・入院手術費用はどのくらいかかる?
ほかにも細かなハテナがたくさんありましたが、手術を終えた今、そのほぼすべてが解決しています!
この記事では卵巣腫瘍(成熟嚢胞性奇形腫)の手術を決定してから入院する前までのQ&Aを、病棟勤務の看護師目線と実際の体験をふまえた患者目線でまとめました。

今回は⓪手術決定〜入院前まで編です!
・全身麻酔下での腹腔鏡手術を受ける予定の方
私と同じような不安・疑問・心配をお持ちの方もいるかと思います。ぜひ参考にしてみてください。
※医療処置の方法や治療方針についても、主治医の指示や方針、術式、年齢・基礎疾患の有無・病状、病院や病棟のルールなどによっても変わります。私と全く同じ経過を辿る方はいないと思いますので、あくまで参考程度にとどめて下さい。
手術が決まるまで
Q.手術予約はどれくらい待ったか?
A.私は5ヶ月待ちました。大学病院を2024年11月11日に紹介受診して初診日に手術日程を決めたのですが、最速で2025年3月24日と言われました。(結局家の事情で4月下旬に予約しました)。前医の産院では、「ここの大学病院は手術は1年くらい待つかも」と言われていましたが、家の事情がなければ最短で4ヶ月半の待機で済んだと思います。
Q.発覚から手術までどんな経緯を辿ったのか?
A.病気の発覚から手術までの経過です。
・2024年2月 第二子妊娠3ヶ月の頃、妊婦検診のエコーにて「右の卵巣が5cmほど腫れている」と指摘。当初はチョコレート嚢胞と言われていた。
・2024年7月 MRI おそらく成熟嚢胞性奇形腫とのこと 。直径7-8cm大。
・2024年9月 第二子出産
・2024年11月に大学病院紹介受診、翌年4月に手術決定
という流れでした。
Q.なぜ出産時に帝王切開で取らなかったのか?
A.この腫瘍は帝王切開に変更してまで取るものではないかな、と妊娠中の主治医に言われました。
・腫瘍の位置的に産道にあまり影響がなく、経膣分娩でいけそうだった
・腹腔鏡手術を行っていない産院だった
・腹腔鏡手術の創部は開腹創よりも小さく、治りも早く、痛みも少ないので、そちらを勧められた
以上の理由で、私の場合は『産後落ち着いてから別の病院で腫瘍の手術をする』という結論になりました。

成熟嚢胞性奇形腫は妊婦検診で見つかる方も多いそうです。病状や経過は人それぞれ違いますので、主治医とよく相談して決めるのが一番と思います。
ちなみに職場の同僚は癒着の強いチョコレート嚢胞だったので、帝王切開時に嚢胞も切除したそうです。腫瘍の種類や大きさ、位置によっては治療方針も変わるみたいです。
手術決定〜入院前まで
Q.手術を受けると決めたキッカケは?受けない場合のメリット、デメリットは?
一般的に成熟嚢胞性奇形腫は5cm以上が手術適応となり手術を勧められます。主治医曰く、茎捻転のリスクが出てくるからだそうです。
卵巣成熟嚢胞性奇形腫(以下奇形腫とする)は若年者に好発する,胚細胞性腫瘍の一つである.破裂,感染,茎捻転などの合併症が起こり得る事,自然退縮が期待出来ない事,長期間後,特に閉経後に悪性転化する可能性が有る事などから通常は発見次第手術的に摘出する事が適切であると考えられる.
(引用:良性腫瘍(3) 長径3cm以下の卵巣成熟嚢胞性奇形腫 | 一般社団法人関東連合産科婦人科学会 日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2) 138-138, 2002)

私の場合は5㎝以上になっていたので腹腔鏡手術手術を勧められました。
・小さくなることはない
・大きくなると腹腔鏡ではできずに開腹手術になる可能性もある
・良性か悪性かは結局生検に出してみないと断定できない
・ほおっておいたら閉経後に悪性転化する可能性がある
と、手術を受けないことのデメリットのほうが大きいと感じて手術を決めました。
手術を受けないことのメリットは、「今無症状で困っていないのに手術を受けるのが怖いからしなくて済む」「治療費がかからない」ことかなと思います。問題の先延ばしをして将来困るのは自分ですし、基本的には医師の勧めに従うほうが賢明かと思います。手術自体迷っている方は、手術をしなかった場合のメリットやデメリットを医師によく聞いて、決めてみてください。
Q.お腹をどれくらい切るの?痛みはどれくらい?
A.私は腹腔鏡手術でしたので、下腹部の1-2cmの切開創×3箇所ですみました。中には15cmや30cmくらいにも腫れ上がる場合もあるようで、そうなると開腹手術になるそうです。
A.創部自体の痛みは思ったほど痛くなく、たまに引っ張られるような痛みがある程度でした。術後、痛み止めを飲まなくてもよかったぐらいです。それよりも腰痛と肩痛の方が辛かったです。
Q.初診から手術まで、何回受診したか?
A.計4回でした。
1回目:2024年11月に大学病院婦人科を紹介受診
2回目:2025年2月 MRI、婦人科診察
3回目:2025年3月 術前検査、婦人科診察
4回目:2025年4月 麻酔科受診、婦人科診察

手術まで毎月診察かと思っていたので、こんなものかーと正直拍子抜けでした。
Q.術前検査、何をした?
A.2025年3月に1日だけ受診してまとめて術前検査を受けました。採血、採尿、心電図検査、胸部レントゲン、呼吸機能検査(スパイロ)、医師の診察です。スパイロは息を大きく吸ったり吐いたりする検査です。採血がチクッとした程度で、苦痛を伴う検査はありませんでした。
前月にMRIは取っていたのでこの日は受けず。
Q.手術待ちの期間中に腫瘍は大きくならなかった?
A.医師に言われた数字で判断すると1年と2か月で2,3㎝程増えたことになっていますが、ほぼ大きくならなかったと言っていいと思います。
腹腔鏡手術で取り切れましたし、腫瘍自体がきれいな球体ではないので数㎝は誤差の範囲内でしょう。以下、具体的な数値です。
・2024年7月 7~8㎝(MRI、内診)
・2024年11月 10㎝以上?(大学病院初診時は外来教授の内診で「10㎝以上だね、大きくなってるかも」と言われた)
・2025年2月 7~8㎝(MRI)
2025年4月 術後、実際は8㎝程度だったと言われました。腫瘍が小さくなることはないので、数センチの誤差で一喜一憂していた自分を思い返すと「気にしすぎだったかなぁ」と今なら思えます。
手術の予約を最速で取った時点で、実際の腫瘍がどれくらい大きくなるのか気にしてもどうしようもありません。大きくならないこと・茎捻転起こさないことを祈りつつあとはなるべく気にしないようにしましょう……。

(気になる気持ちはとても!分かりますが!笑)
Q.入院期間は?入院中のスケジュールはどんな感じ?
手術当日:8時半 手術 13時頃終了
術後1日目:午前中に安静解除(トイレ歩行の許可あり)。朝 重湯から食事再開
術後2日目:朝昼 3分粥、夜 5分粥
術後3日目:朝 全粥、昼には常食へ
術後4日目:9時半診察、11時退院
ざっくりと上記のスケジュールでした。
細かいスケジュールや術前についてはこちらの記事でも書いていますので、よかったらのぞいてみてください。
https://hotalife.com/opereport-1/
Q.受診でかかった費用は?
A.私の場合、合計9万円程度でした。
・保険外:食費に5100円、個室代が26400円
実際、保険診療分の保険点数分は70000点だったので、10割負担だと70万円かかります。私は医療費の自己負担額が3割負担なので、単純計算で20万円(+ごはん代個室代3万ちょい)の23万の支払い……かと思いきや。
入院前に限度額適用認定証を提出していたので、退院の会計時から高額療養費制度適用後の額(57600円)で済みました。そうでなければ退院時に窓口で一旦23万円を支払い、後で払い戻される事になっていたはずです。(トータルの出費額は変わりません)
『高額な医療費を支払ったときは高額療養費で払い戻しが受けられます。
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
月をまたいだ場合は月ごとにそれぞれ自己負担額を計算します。
例えば、1月10日から2月10日まで診療を受けた場合、1月10日~1月31日と2月1日~2月10日までで自己負担額をそれぞれ分けて、自己負担限度額を超えた分が払い戻しされます。(それぞれの月の分の申請が必要です)
医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、「限度額適用認定証」を提示する方法が便利です。』
引用:全国健康保険協会HP
高額療養費制度の自己負担限度額は本人の収入額によって変わります。大抵の人は6〜10万円弱/月で済むはずです。(上記引用先にも自己負担限度額表が記載されているので気になる方は確認してみてください)。※個室代や食事代などの保険適応外のものは除きます。
Q.個室希望だけど入れる?
A.個室予約は出来ないので、病棟内の空き状況によります。
……という返事が、スタッフからは来ると思います。実際そうとしか言えないのですが、看護師のリーダー業務の一貫でベットコントロールに少し携わった経験もあるので、もうすこし踏み込んで解説しますね。(※私個人の経験による解釈ですので参考までに……。)
個室に長期入院されている方が多いと空きが少ないですし、同じ日に個室から退院する患者さんがいれば運が良ければ入れるかもしれません。ただ婦人科系の病棟は個室希望者が多いのか、他科よりも設計上個室の母数が多いと感じました。産科も兼ねている病棟なら特に多いかもしれません。なので入院から数日後に個室に移動、というパターンもあり得るかと思います。実際私は術直後〜翌朝まではナースステーション横の重症者個室で一晩過ごし、翌朝個室に移動しました。
予約入院の場合「この日に個室希望の人が入院する」と分かっているので、緊急入院の場合に比べれば個室に入れる確率は高めかもしれません(病院としても、個室料金を払ってくれる人を入れたいはずので)
ただ個室希望ではなくても、重症患者・感染症対策・大部屋だと患者トラブルがある等の理由で、お金云々を抜きにして個室管理が必要な方もいます。
色々予測はしましたが、結局入院時の病棟の状況次第になります。病院側としてもなるべく個室希望者に個室を確保してくれるはずなので、あまり期待せずに「空いてたらラッキー!」くらいの気持ちでいると精神衛生上もよいと思います。
Q.個室料金はいつからかかる?
A.個室希望者の場合、個室に入った時間帯は関係なく利用開始日から個室料が発生します。
ちなみに大部屋希望なのに(術後の重症者管理のための個室移動、または感染対策などで)病院の都合で個室に移った場合は、どの病院でも個室料は取られないはずです。たまに「個室希望じゃなかったのに個室に入れられて請求書にもきっちり個室料が請求されていた!」という話を聞くので、あてはまりそうな方は診療費請求書を一応確認しておくと良いと思います。
まとめ
卵巣腫瘍摘出術の手術や入院前について、私自身が不安・疑問に思ったことを中心にQ&Aでまとめてみました。手術や処置の具体的な辛さや術後の様子については、次の記事で紹介しますね。
みなさまの不安・疑問・心配事が少しでも解決されれば幸いです!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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